「ポインティングゲーム、子どもたち大好きなんですよ〜」
以前、そんな話を聞いたことがあります。
そのとき私の頭の中は、正直、
「……なんで?」
でした(笑)。
例えば、先生が
“Cat!”
と言ったら、子どもたちが猫の絵を探して指をさす。
“Dog!”
と言ったら、犬の絵を探して指をさす。
早く指をさせた方がポイント!
さらに、たくさんポイントを取ったらシール!
確かに盛り上がります。
子どもたちも「もう一回!」と言うかもしれません。
でも私は、ゲームやアクティビティを選ぶとき、「子どもが喜ぶから」だけでは選びません。
必ず考えたいことがあります。
「この活動を通して、子どもたちは何ができるようになる?」
そしてもう一つ。
「この活動は、今日の授業のゴールや、この後の活動とどうつながっている?」
ゲームそのものが楽しいかどうかだけではなく、レッスン全体の中で、その活動がどんな役割を持っているのか。
私はそこまで考えてから、活動を選びたいと思っています。
同じポインティングゲームでも、全然違う
誤解してほしくないのですが、私はポインティングゲームをやらないわけではありません。
BINGOもやります。
ゲームもたくさん使います。
でも例えば、
“Cat!”
→ 猫を探す
→ 指をさす
だけでは、あまり使いません。
同じポインティングゲームをするなら、例えばこんなふうにします。
生徒:“Is it an animal?”
先生:“Yes!”
生徒:“Is it big?”
先生:“No!”
生徒:“Does it have four legs?”
先生:“Yes!”
子どもたちは、情報を聞きながら、
「何だろう?」
と考えます。
animalだから、この中のどれか。
bigじゃないなら、これは違う。
four legsなら……。
情報が一つ増えるたびに、頭の中で候補を絞っていく。
そして、
「分かった!Cat!」
と思ったところで、”単語を言って” 絵を指さす。
どちらも、やっていることの名前は「ポインティングゲーム」です。
でも、子どもの頭の中で起きていることは違います。
一方は、
聞く → 探す → 指さす
もう一方は、
聞く → 意味を理解する → 情報を整理する → 予想する → 判断する → 指さす
私が見たいのは、ゲームの名前ではなく、その活動をしているとき、子どもの頭がどう動いているかです。
「盛り上がる」の中身を考えてみる
“Cat!”
と言われて、誰よりも早く猫を指さしたら1ポイント。
これは盛り上がります。
ポイントが貯まったらシールがもらえるとなれば、さらに夢中になるかもしれません。
でも、ここでも一度考えてみたいのです。
そのとき、子どもは何を目的に活動しているのでしょうか。
英語を理解したい?
意味を考えたい?
自分の英語を使ってみたい?
それとも、
相手より早く取りたい。
勝ちたい。
ポイントが欲しい。
シールが欲しい。
になっていないでしょうか。
もちろん、競争そのものが悪いわけではありません。
私もレッスンに競争を取り入れることはあります。
ただ、競争を入れると、活動は比較的簡単に盛り上がります。
だからこそ、「盛り上がった=良い活動だった」ではないという視点を持っていたいのです。
例えば、
“Cat!” → 早くcatを指さした人が1ポイント!
というルールなら、ゲームに勝つために必要なのは、じっくり考えることではありません。
むしろ、考えていたら負けます。
できるだけ早く反応することが、このゲームで勝つための正解です。
教師が「生徒に考えてほしい」と思っていても、ゲームのルールそのものが「考えるより早く反応した人が勝ち」になっていたら、生徒は当然、勝つために行動します。
だから私は、
「このルールにしたとき、子どもたちは何を目的に動くだろう?」
というところまで考えたいと思っています。
子どもが「喜んでいる」=主体的に学んでいる?
そして、もう一つ気になることがあります。
子どもたちがゲームを喜ぶ理由は、本当に「英語が楽しいから」でしょうか。
もちろん、そういうこともあります。
でも、
決められたことをやればいい。
深く考えなくても参加できる。
当たれば嬉しい。
勝てば嬉しい。
シールがもらえる。
そんな「楽しい」もあります。
一方で、
「分かった!」
「自分で考えたら答えにたどり着いた!」
「言ってみたら伝わった!」
「さっきは分からなかったのに、できた!」
という楽しさもあります。
私は、**学ぶことそのものから生まれる「楽しい」**を、レッスンの中にもっと作りたいと思っています。
ペアワークにすれば解決するわけでもない
では、先生主導のゲームをやめて、ペアワークにすればいいのでしょうか。
それも違います。
例えば、
A: Do you like apples?
B: Yes, I do.
A: Do you like bananas?
B: No, I don’t.
生徒同士で英語を話している。
一見すると、とても「生徒主体」の授業に見えます。
でも、
「この順番で質問してください」
「次はこれを言ってください」
「終わったら次の人に行ってください」
と、すべてが決められていたらどうでしょう。
話しているのは生徒でも、用意されたレールの上を進んでいるだけかもしれません。
だから私が見たいのは、
「誰が話しているか」だけではなく、「誰が考えているか」。
生徒自身に、
どう答える?
どれを選ぶ?
どう伝える?
これはどういう意味だろう?
自分ならどうする?
と、考える余地があるかどうか。
生徒がたくさん話している=主体的な授業、ではないと思っています。
そのシール、本当に必要?
そして、もう一つ。
シールです(笑)。
もちろん、シールそのものを否定したいわけではありません。
年齢や目的によっては、ご褒美が良いきっかけになることもあります。
でも、中学校の授業なら多くの場合、時間は50分程度です。
ゲームをする。
ポイントを数える。
シールを選ぶ。
先生のところにもらいに行く。
配る。
貼る。
一つひとつは短い時間でも、積み重なれば決して小さくありません。
限られた授業時間だからこそ、私はできるだけ、
英語に触れる。
考える。
試す。
使う。
ことに時間を使いたい。
そして何より、
「英語が分かった!」
「自分でできた!」
「伝わった!」
ではなく、
「勝ったからシールがもらえた!」
が活動の最終目的になっていないか。
シールを使うことにも、
「なぜ?」
を持っていたいと思っています。
ゲームをやめよう、という話ではありません
ここまで読むと、
「じゃあ、ゲームはやらない方がいいの?」
と思う方もいるかもしれません。
そうではありません。
私はゲームもやります。
BINGOもやります。
ポインティングゲームもやります。
子どもたちが笑っているレッスンも大好きです。
ただ、
「子どもが喜ぶから、このゲームをやろう」
ではなく、
「今日、子どもたちに何ができるようになってほしい?」
そこから考える。
そして、
「そのために、このゲームをどう使う?」
と考える。
さらに、その活動だけを切り取るのではなく、
「この活動が、この後の活動や今日のレッスンのゴールにどうつながる?」
まで考えてみる。
ゲームも、BINGOも、ポインティングも、ペアワークも、シールも。
それ自体に「良い」「悪い」があるわけではありません。
何のために、どう使うのか。
そこに、教師のレッスン設計があると思っています。
明日のレッスンで、5つだけチェックしてみてください
ゲームやアクティビティをしたあと、「盛り上がった!」だけで終わらず、こんな視点で少しだけ振り返ってみてください。
□ ① 誰が一番話していた?
先生ばかりが説明したり、指示したりしていなかった?
□ ② 生徒は「考える」時間があった?
ただ聞いて反応するだけではなく、思い出す・予想する・比べる・判断する場面があった?
□ ③ 生徒は「先生の指示通りにやる」だけになっていなかった?
「どう答える?」「どれを選ぶ?」「どう伝える?」など、生徒自身が考える余地があった?
□ ④ 生徒は何に夢中になっていた?
英語を理解すること、考えること、伝えること?
それとも、勝つこと・ポイント・シール?
□ ⑤ その活動は、今日のレッスンのゴールにつながっていた?
その場だけで完結せず、その後の活動や「今日できるようになってほしいこと」につながっていた?
全部にYESである必要はありません。
大切なのは、ときどき立ち止まって、
「なぜ、今日この活動をするんだろう?」
と考えてみること。
「今日のゲーム、すごく盛り上がった!」
それは嬉しい。
でも、そのもう一歩先に、
「その時間、生徒の頭の中では何が起きていた?」
という視点を持つ。
子どもたちの「楽しい」を大切にしながら、その先にちゃんと「学び」がある。
私は、そんな英語レッスンを作っていきたいと思っています。
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